※以下、KOBASHI HOLDINGS株式会社を含めたKOBASHIグループ全体を指して「KOBASHI」と記載しています。
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モノづくりとパートナーシップで「地球を耕す」
変化する社会課題をモノづくりの力で解決する
- 初めに、KOBASHIの理念や価値観について教えてください。
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坂下
KOBASHIは、地球上の様々な社会課題の解決が会社としての使命だと考えており、理念として「地球を耕す」という言葉を掲げています。
社会が今の状態のままだと、我々の世代が地球の恵みを享受できる最後の世代になってしまうという強い危機感を持っているからです。弊社の原点は、鍛冶職人だった創業者が食料問題を解決しようと考えたことにあります。創業は1910年。鍛冶の技術を活かして農具を作ったことに始まり、100年以上モノづくりをおこなっています。時代と共に社会の課題が変化していくなか、KOBASHIはこれからも、モノづくりを通して地球や人類の課題解決に取り組んでいきます。
しかし、地球や人類の課題に向き合うには、KOBASHIだけでは限界がある。だから、同じ志や価値観を持つ方々とのパートナーシップもとても大切にしています。
インタビュー時の様子。理念や事業内容について坂下さんにお話いただきました!
- とても壮大ですね!その理念のもとに、どのような事業をされているんですか?
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坂下
詳しくは後ほど説明しますが、KOBASHIグループ全体では、「農業機械事業」と「モノづくり支援事業」という2つの事業があります。グループ全体の売上は約114億円、社員数は361名です。
子会社が4社あり、そのうち3社が「農業機械事業」、1社が「モノづくり支援事業」をおこなっています。ちなみに、KOBASHI HOLDINGSは子会社の事業戦略の立案や経営管理をおこなう会社です。
KOBASHIの3つの特徴
- 複数の会社で役割分担をしているのですね。KOBASHIグループ全体としては、どのような特徴がありますか?
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坂下
KOBASHIの特徴は3つあります。
1つめは「未来志向の経営陣」です。私の経験上、なんらかの問題や課題に対して「現状のままではまずい」と言葉にする方は多いですが、解決に向けて実際に行動に移す経営者となると途端に少なくなると感じています。
その点、KOBASHIは違います。単に危機感を口にするだけではなく、実際に未来に向けて形にする行動量とスピードが凄いです。最近では、「地球を耕す」という理念浸透を社内外に図るために大きな地球儀を作る、なんてこともしています。
- 地球儀を見て、大きさに驚きました!
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坂下
そうですよね(笑)。
2つめは「強固な財務基盤」で、資金が一定程度あるということです。新しいことや社会課題を解決に向けて動き出そうと思ったときに、お金がないと何もできない。
KOBASHIには、長年、農業機械事業でビジネスをおこなってきました。そのため、ある程度安定した財務基盤持っているということも特徴です。
- なるほど。
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坂下
3つめは「速い意思決定プロセス」です。
私は大企業にいた経験がありますが、中小企業は大企業に比べて、会社の規模が小さく、意思決定のスピードが速い。
大企業は資金や社員が多いので、大規模な事業をおこなうことができますが、ときに事業のスピードが落ちます。
一方で、KOBASHIは非上場のファミリービジネスで、社員数が400人弱なので、意思決定のスピードが速く、動くために必要な人数も確保できる。会社の組織として動きやすいサイズだと感じます。KOBASHIには、未来志向の経営陣、強固な財務基盤、速い意思決定プロセスの3つが揃っている。さらに、制約条件が少なく、ある程度社員がいるからすぐに動き出せる。そういった中小企業ならではのメリットを生かしながら、未来に向けた経営行動ができることが弊社の特徴です。
- 未来に向けていち早く行動ができる会社なんですね。
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坂下
「地球を耕す」を体現したビジョンオフィスには地球型の会議室が!
農業機械の機能を最大限に高め、国内シェアトップに
- 事業内容についても教えてください。
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坂下
1つめの農業機械事業は、創業以来ずっと取り組んでいる事業です。主な商材は、土を耕すときに必要なトラクターの先に取り付ける「作業機」と、作業機に取り付ける「耕うん爪」。耕うん爪は、弊社の製品が国内シェアトップです。
作業機
- すごい!農業機械事業の強みはどういった点ですか?
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坂下
作業機と耕うん爪の両方ともを製造している点が強みです。片方だけを製造している会社は他にもありますが、両方製造している会社は国内で弊社だけです。
農家の方は、作業機と耕うん爪を組み合わせて土を耕します。別々のメーカーの作業機と耕うん爪を使用すると、それぞれの効果が最大限に発揮されないことがあります。一方、弊社では両方を製造しているので、相乗効果が高まり機能を最大限に発揮できるような開発ができるんです。耕うん爪
スタートアップに提供するのは、失敗経験という財産
- では、モノづくり支援事業についても教えていただけますか?
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坂下
はい。モノづくり支援事業は、2020年から始めた新規事業です。創業したばかりの会社(以下、スタートアップ)に、モノづくりのノウハウ提供などをおこなっています。
モノづくりをするスタートアップは、素晴らしい技術とアイデアを持っています。
けれど、いざアイデアを形にしようとしたときに、経験不足が理由で、すぐには作れなかったり失敗したりすることがある。経験不足でつまずくのはもったいないじゃないですか。
KOBASHIに何ができるのか。考えた末に、100年以上培ってきたモノづくりの経験、特に失敗経験をスタートアップに提供することにしました。
- 成功した経験ではなく、失敗した経験の提供ですか?
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坂下
そうです。モノづくりでは、失敗した経験が一番大事だと思います。先人がたくさん失敗して得た学びに触れることができないから、スタートアップも同じ失敗してしまうんです。
ところが、メーカーの失敗経験は、世の中にはほとんど出ていません。失敗は恥ずかしいという面もあります。しかしそれ以上に、失敗経験そのものがその会社の財産だと考えるから社外に知られないようにするのが一般的です。けれど、KOBASHIは失敗経験をスタートアップに提供すると決めた。それが、私たちの価値の源泉であり、差別化のポイントになっています。
- なぜ、会社の財産である失敗経験を提供しようと考えたのでしょうか?
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坂下
そのきっかけは、株式会社ユーグレナ(以下、ユーグレナ社)との取り組みでした。
ユーグレナ社は、サステナブルな社会をつくるために、ユーグレナ等の微細藻類等を活用した食品やバイオ燃料などを開発・製造しています。
ユーグレナの大量培養には巨大なプールが必要ですが、プールを作るには膨大な場所、費用、時間が必要となります。そこで、弊社は、水田造成技術を応用することを提案し、2017年には世界で初めてコンクリートではなくあぜ型に固めた土壌で建設されたプールの建設・稼働に成功しました。コンクリート製に比べて、建設コストが10分の1程度、建設工期が4分の1程度となり、生産コスト削減や生産量拡大への迅速な対応が可能となりました。この経験を通して「KOBASHIの技術は、他のスタートアップにもご活用いただくことができるのではないか」という仮説を立てました。それから、多くのスタートアップを支援させていただいています。
KOBASHIの水田造成技術を応用して建設されたユーグレナ社のプール
- 現在はどのような分野で支援しているのですか?
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坂下
農業分野をはじめ、ドローンにバイオ燃料を搭載する実証実験など、幅広い分野で支援をおこなっています。
モノづくりに関する直接的な支援だけでなく、様々な組織と連携することで支援することもあります。スタートアップの資金面をサポートするファンドと連携し、スタートアップを紹介していただき、モノづくりのアドバイスもしていますよ。
大学と連携して、モノづくり人材の育成をおこなうようなこともしています。
坂下さんのキャリア選択の基準「社会課題を解決できるか」
社会課題解決に全振りする社風と自分の軸がマッチ
- ――坂下さんの入社の経緯を伺えますか?
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坂下
はい。私は、社会課題の解決に向けた仕事ができるキャリアを選択してきました。大学を卒業してから、いろんな会社を経験して、自分で起業をしたこともありましたね。
東京にいたころは、KOBASHIの存在を知りませんでした。あるときその存在を知り、KOBASHIについて調べていると、魅力的に感じる部分がたくさんあって転職することにしたんです。
- どんな点に魅力を感じましたか?
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坂下
冒頭でお話した会社の特徴には、強い魅力を感じましたね。
特に惹かれたのは、KOBASHIが社会課題解決に振り切って行動する会社であることです。そんな会社は、私の知る中ではあまりありません。
KOBASHIはそれほど会社の規模が大きくないので、社外対応は少ない。そして、社会課題の解決に向けて「やると決めたら突っ走る」という社風がとても魅力的でした。
- 自分のキャリアの軸と繋がっている仕事ができると、やりがいを感じられそうですね。
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坂下
そうですね。自分の軸である「社会課題を解決する」ということが、思い切りできるので日々やりがいを感じます。
想定外の嬉しい歓迎
- 入社して感じたギャップはありましたか?
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坂下
基本的にはありませんでした。
けれど、1つだけ想定外だったことがあります。KOBASHIという歴史の長い会社に転職することになり、「新参者の私が『社会課題を解決したい』というと、既にいる社員の方とぶつかるかもしれない」と少し不安だったんです。ところが、全くそんなことはありませんでした。社員の皆さんが理念に賛同していて、「仲間が増えた!」と歓迎してくださったんです。予想外で驚きましたが、嬉しかったです。
社会課題を解決したいあなたへ
社会課題解決に対するパッションがある人と働きたい
- 坂下さんご自身はどんな人と働きたいと思いますか?
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坂下
どんなことでもいいので、社会課題を自分なりの目線で捉えて、「こういう課題を解決したいんだ」という思いがある方ですね。その方自身の思いと、我々の思いが掛け合わされるからこそ、新たに生まれてくるものがあるからです。
逆に、「別に社会課題は自分には関係ない」「自分が生きている間に地球が残っていればいいや」という考え方の方とは合わないと思います。どんなことでもいいから「何とかしたいんだ」という思いがあれば、スキルなどは後からついてくるし、つけられる。社会課題を解決したいという熱量が高い方と共に働きたいです。
信念に出会うために、行動し自分と向き合う
- 最後に読者に向けたメッセージをお願いします。
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坂下
私自身、学生時代は、自分は将来何をすべきなのかわからなくて焦っていました。もしかしたら読者の方にもいるかもしれません。そんな方へのメッセージですが、今、目の前にあることを、とにかく本気でやっていくのが大事だと思います。
人から薦められたことや言われたことは、仮に自分が興味なかったとしても、目の前にあるものを片っ端からやってみるのです。そうすると、自分の好き/嫌いなこと、やりたい/やりたくないことが見えてくるんです。そしてそのうち、自分が行動して、周りが評価してくれるもの/そうではないものがあることも見えてくるんです。この積み重ねの中で「評価されることは、誰かに感謝されていて、誰かを喜ばせている」ということが分かってきて、次第に「自分のすべきこと」が見えてきたんですよ。
- 行動していると見えてくることがあるんですね。
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坂下
そう思います。人生とは、挫折や妥協の連続。だからこそ大事なのは、常にそこから這い上がろうとする意思だと思います。這い上がる力の源になるのは、自分が行動してきたことで見出した信念。なぜそれを自分がすべきかという「why」のことです。
故に「どこで、誰と、いつ働くか」よりも先に、「why」を掘り下げることが大切。そしてwhyの答えは自分の中にしかありません。それがあると壁にぶつかった時の未来の自分自身を助けることができる。若いうちにとことん自分と向き合っておくといいと思います。
- お話を伺って、もっともっと行動しようと思いました!本日はありがとうございました。
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坂下